仕事柄ということもあって、まあ、新聞は読むほうだ。しかし紙の新聞はすっかり止めてしまった。読んでも読まなくても、部屋にたまって資源ゴミになるのが面倒なのだ。ただ、いくつかの新聞はネットで有料購読している。
で、毎日新聞もデジタル会員なのだが、きょうあらためて会員特典として『サンデー毎日』がビューアーでまるごと読めることに気づいた。今頃気づくなんてマヌケ。
『サンデー毎日』なんて、最近、床屋か歯医者かでしか目にしないな。青木理、保阪正康が連載しているのか。おお、平井玄の「東京階級地図」はなかなか面白いぞ。
対談相手の顔写真がヌケている
で、読み進むうちに、阿木燿子の連載対談のページに行き着いたのだが、ここで不思議な光景に出くわした。今週号(5月9日号)の対談相手は「横山裕」という関ジャニ∞の子なんだが、肝心のその子の写真が誌面にないのである。ちなみに私は「横山裕」なる人の顔を知らないんだけれど(笑)。
誌面の一部を画像で紹介すると、こんな感じだ。
左のすっぽり白くなっているところが、本来の写真位置だ。阿木さんはまるで、塗り壁と対談しているようなことになってしまっている。
さらにページをくっていくと、「岡田准一」のインタビューもあるのだが、これも彼の写真がすっぽり抜けて、影になっている。あらためて今週号の表紙をみると、あ、そうか、最初は何か新手のデザインかと思っていたのだが、影武者は本来は(紙版では)岡田准一なのだな。
うーん、これが噂の「ジャニーズの肖像権タブー」ってやつなのか。タレントの肖像権を厳密に解釈して、紙媒体なら写真OKだが、ネットには使うななどと縛りをかける。ファンクラブの子が、「今週号の○○はキムタクが表紙です」とSNSに画像をツイートするのも禁じられているという。
新聞や雑誌の広告が、デジタル版だと抜けているというのはよくあって、これはむしろメディア側が代理店との間で結ぶ広告掲載条件ゆえの規制だと思うのだが、有名タレントの顔がネットで消滅するのは別の理由からなのだ。
ジャニーズ肖像権タブー恐るべし
このタブーについてはこちらのブログで面白可笑しく紹介されている。
日刊サイゾーのこの記事を読むと、なるほど向こうの論理はこうなっているのか、ということがわかる。
たしかにジャニーズ事務所の弁護士さんの話も、わからないではない。
ネットの場合は、写真のコピーが技術的に容易で、タレントの権利保護が十分に図れないというケースが多いからです。本当に報道目的だけで使われ続ければいいのですが、実際には第三者の手によってコピーが拡散して、タレントが管理できない形で肖像が使用される可能性が低くない。そのためには、入り口で、ある程度コントロールをしなければ、自分たちの権利は守れません。ですから、同じスポーツ紙であっても、紙面とウェブサイトでは別の媒体として考え、許諾・非許諾を媒体ごとに行っています。
私なりに上記のコメントを解釈すれば、こういうことになるんだと思う。
「タレント」とはいうが、芸能事務所にとっては「商品」である。その商品は、メディアに露出・流通することを通して初めて価値をもつ。したがって、供給者の適切なコントロールの下にメディアに多数露出させることが、この商品のマーケティングにおける最大の獲得目標になる。
しかしながら一方で、その画像が管理されないまま、むやみやたらにネットに流出しては、その価値は希薄化しかねない。ときにはブランド価値が毀損することもある。適切にコントロールされた状態で、しかも「ここでしか見られない」という稀少性をつねに演出することで、この商品は初めて成り立つ。
しかし商品は作り手の思いや都合だけで成立するものではない。消費者が受容し、消費し、再生産を希望するというデマンドサイドの都合があって、初めて商品は商品たりうる。それについての配慮というか考察は、上記のコメントからは感じられない。
そのサプライサイドの論理はたしかに法律論的には正しくても、文化的論にはどこか寒々とした印象を受けるのである。
なにごとも寡占・独占はよくないよ、という話
それにしても、他の芸能事務所でメディアに対してこんな規制をかけているところって、あるんだろうか。旬のタレントの顔写真やグラビアは雑誌の花でもあるわけで、ネットで雑誌を読む時代に、そこだけ“スミヌリ”を指示する態度って、なんだかな〜と思う。
ちなみに、「サンデー毎日」サイトのバックナンバー紹介コーナーは、こんなヘンテコなことになっちまっている。どの号の表紙がジャニ系か、一目瞭然。スクリーンの向こうの影をみてその人を当てる、というクイズ番組が昔あったよな。
ジャニ系タレントが表紙を飾る確率が高い、産経新聞系のエンタメ雑誌のバックナンバー紹介はもっと悲惨だ。
むろんジャニ系マーケットが巨大だからこそ、この手の雑誌が跋扈するわけで、メディアと芸能事務所のビジネス利権をめぐる条件闘争、そしてその闘いでメディア側が圧倒的に負けているという戦況が、かような事態をもたらしていることは言うまでもない。
しかしなあ、俺だって毎日新聞の購読料をちゃんと払って、デジタル版「サンデー毎日」を読んでいるのに、事務所の「許諾」が得られないばかりに、旬のタレントのご尊顔が拝めない。そういう一読者の不利益のことは、芸能産業やメディア産業はどう考えているのだろうか(別に岡田某や横山某の顔を拝みたいわけじゃないんだけれどね)。
いずれにしても、メディアが巨大で寡占的な供給源に依存しすぎると、読者の楽しみは一定失われてしまうという、パラドクスというか、当然の帰結がここに成立してしまっているわけである。
ま、当ブログは、あんまり肖像権意識しないでやってます。でもけっこうヘタレなんで、どこからかクレームついたら、すぐ止めますけど。