小石川日乗Hatena版

おっさんがよしなしごとを書き散らします

狂奔遊泳

screenshot_1234.jpg 今日は長崎市にあるマグロの養殖研究所で、「ゲノム編集」の話を聞きに行ったのだが、そこで知った言葉に「狂奔遊泳」というのがあった。

 強い光などなんらかの強いストレスがかかることで魚が錯乱状態になること。マグロの養殖ではよく見られる現象で、パニックになったマグロは生け簀の網に首を突っ込んで死んでしまう。資産価値の減少を防ぐという意味から、特定の遺伝子をコントロールして、パニックにならないマグロを作り上げる研究が始まっている。


 動物の本能まで変えてしまう、ゲノム編集という遺伝子操作技術の功罪は置いといて、私が思い浮かべたのは、ここ数日の「Pokemon GO」騒動だ。

25日午前10時ごろ、金沢市の国道359号で、軽乗用車が停止中のライトバンに追突、ライトバンの運転手が軽傷を負った。石川県警によると、軽乗用車を運転していた20代の男性は「ポケモンGOをしていて前をよく見ていなかった」と話したという。
「ポケモンGO熱中、クマに気づかず接近も 交通事故多発:朝日新聞デジタル」


 この数日、暑さと「PokemonGO」のせいで、日本人はみな一斉に、生け簀の中のマグロのようにパニックを起こしている。ウィルスに肉体を乗っ取られ、怪しい電波に操られながら、ゾンビのように街を徘徊し、ターゲットを追い詰める。安手のホラー映画を観ているようだ。


 開発元にしてみればこの程度の「事故」の発生は想定内だろう。それを面白おかしくメディアがかき立てるものだから、このゲームを知らなかった人もやってみたくなる。ここ数日はメディアも狂奔状態。マーケティング効果絶大だ。

 

 狂ってしまったのは子どもや学生だけでない。きょう一緒に行った30歳前後の女性編集者も、長崎空港に着くなりそのゲームをやりだした。都市部だけではない。土曜日の福島の人口3000人の里山でも、小学生が「PokemonGO」を持って公民館を勢いよく飛び出してきた。


 昨年、葛西水族館でマグロの狂奔遊泳が発生し、大量死した事件のときは、原因がつかめないこともあって「不気味だ」という報道があったが、私に言わせれば今回の「ポケモン騒動」のほうがより不気味だ。吸い込まれるように車に突っ込み、引き寄せられるようにクマに近づくのは、マグロではなく人間だからだ。


 スマホGIS(地理情報システム)とAR(拡張現実)の技術が安価になったところで、「PokemonGO」のようなゲームの出現は予測されていた。「PokemonGO」の前身の「Ingress」はそんなに日本で流行らなかったが(知人の何人かはハマってたけど)、それはきっとアプリの日本語化が遅れたのと、マーケティング戦略が稚拙だったからだろう。


 この騒動をどう捉えるべきか。私の感想はただ一言。狂奔遊泳して、みな死んでしまえ!

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