小石川日乗Hatena版

おっさんがよしなしごとを書き散らします

インフルエンサー様

f:id:taa-chan:20180214104852j:plain  昨日、ゆりかもめの「市場前駅」というのに初めて降りた。豊洲市場の駅。産業廃棄物の上を均して、生まれ変わろうとする市場の構造物。他にはいくつかのイベントスペースのようなものがあるだけで、市場がオープンする前の今は、人通りも少なく無機質な印象である。

 駅前のビルで何かのイベントをやっているらしい。その受付が改札を出たところにあって、「報道関係」「●●関係」……などとあるなかで、「インフルエンサー様」と貼り紙がされているのをみて驚いた。「乃木坂46」の曲名や政府関係の文書にも使われる、ここ数年のマーケティング用語(ちょっと前は「アルファブロガー」とか「カリスマブロガー」とか言った。関連用語に「ステマ」がある)。  もちろん、決してインフルエンザの可能性があってマスクをしている人、という意味ではない。

 しかし、こういうこなれない横文字が眼前に飛び出すと、背筋がざわざわ言うのは俺だけか。「俺、ちょっと世間に影響があるらしいんだよね」などと、喜々として「インフルエンサー様」の列に並ぶ人々の顔を見たいとは思ったけど……。

映画『否定と肯定』

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 新年最初の映画劇場鑑賞。日本にもウジャウジャ出現している、歴史修正主義の不誠実なデマゴーグたち(例えば百田尚樹など)に見せつけてやりたい秀作。

 アウシュビッツ否定論は、欧米だけの話ではなく、実は日本でもかつて華々しく登場したことを忘れるわけにはいかない。若い人は知らないかもしれないが、90年代半ばのいわゆる「マルコポーロ事件」の火付け役になった西岡昌紀氏がその典型だ。

 西岡氏はもともとは医学者だが、おそらく欧米の歴史修正主義に感化されたのだろう。アウシュヴィッツを“取材”し、「アウシュヴィッツにガス室はなかった」「ユダヤ人絶滅計画はなかった」などと、映画のデビッド・アービングと同様な主張を展開し、論文を文藝春秋の雑誌「マルコポーロ」に掲載した。

 しかし、これはサイモン・ウィーゼンタール・センターなどから激しい抗議を受け、雑誌は自主廃刊となり、その編集長である花田紀凱氏は実質的に社を追われた。(Wikipedia 「マルコポーロ事件」

 当時の日本でも、あまりにも唐突な感のある西岡氏の主張が広く受けいれられることはなかった。しかし、その論文を堂々と掲載した背景には、この雑誌の編集者になんらかの政治的な意図があったことはたしかだ。それは、その後の花田紀凱氏が編集する雑誌の性格をみればよくわかる。

 もちろん当時も、ユダヤ人団体からの抗議で雑誌が廃刊に追い込まれたことに、言論の自由という観点から疑義をはさむ声もあったことは事実だ。しかし、歴史の検証にさらされないまま横行する「言論の自由」が、いかに陳腐で、時として一方的なヘイトスピーチにつながるものであるかは、今となってみれば明らかだろう。映画はそのことをしっかりと示している。

*2018/01/06 日比谷TOHOシネマズ シャンテにて観賞

●参考サイト: デボラ・リップシュタット本人のTEDにおけるスピーチ「ホロコースト否定説の噓に潜むもくろみ」

●参考記事: (私の視点)修正主義の危険性 歴史教育で「悪意」封じよ 武井彩佳

Sam Shepard

 アメリカの劇作家・俳優、サム・シェパード。今年の7月に亡くなっていたんだ。シブサではハリウッド一といっていいイイ男。彼が脚本を書いた『パリ、テキサス』は大好きな映画。俳優として初めて認識したのは『ライトスタッフ』。アメリカの宇宙開発草創期の話だが、シェパードは人類で初めて音速を超えたパイロット、チャック・イェーガーを演じた。『ペリカン文書』の大学教授役も印象に残る。この前、WoWoWで観た『ミッドナイト・スペシャル』という映画ではオカルト教団の教祖役だったが、映画自体、筋のつかめない前半に辟易して途中で消してしまった。

 下記の記事が、シェパードの語録を残している。

 続いて彼は、愛国者、愛国心というものも誤解されていると指摘した。「本来、愛国心というのは、政府でなく、国に対する思いのことなんだ。そこがごっちゃにされている。愛国者というと、右翼かと思われる 。僕は、アメリカという国に忠誠心を持っている。僕の祖先が作ったんだよ。パイオニアたちがね。ジョージ・ブッシュよりずっとずっと前に。はるか昔、マーク・トウェインは、『政府を支持しなさい。もし、その政府にその価値があるのならば』と言った。今の政府にその価値はない。今は、政府を恥じるべき時だ」。 news.yahoo.co.jp

The Guardian

 先日の「FOOT!」でベン・メイブリーが母校のオクスフォード大学を訪れる様子が放映されていた。サッカー・ジャーナリズム取材ということで、The Guardianの編集者にもインタビュー。

f:id:taa-chan:20171227200126j:plain  そこで知ったのだが、Guardian のWebメディアはほとんど広告に頼らず、もっぱら読者からの寄付で運営されているという。 もともとインテリ向けの左派リベラル紙として知られてはいた。おそらく、メイブリー自身が好きな新聞なのだろう。Brexitなど欧米の保守化の流れのなかで、それをよしとしない読者とその寄付を、むしろ新たに獲得していると、編集者は語っていた。

 最近のWebメディアで流行りともいえる、タイトルだけキャッチーで中身はクソみたいな記事、要はクリックだとか、検索流入だとか、金儲けの数字だけを狙ったあざとい記事の横行についても、編集者は批判的。むしろスマホ閲覧を考えて、記事のタイトルは端的で短いものを志向しているという。

 WikipediaでThe Guardianを引くと、日本での提携紙が読売新聞というけれど、これはきっと何かの間違いに違いない(笑)。

小名浜「竹町通り」のこと

 いわき「日々の新聞」の安竜昌弘さんが企画した「イサジ式」のいわきライブ。それに併設する形で、かつて小名浜にあった「珈琲屋」というジャズ喫茶のオーナーを招いて、一日だけのコーヒーの味を再現するイベントをやったという。

 この「珈琲屋」については、友人たちとやっているMLに私はこう書いた。

 この「珈琲屋」という店については、安竜さんが「いわき日和」 に詳しく書かれていて、前に彼にお会いしたときも、「小名浜時代にこの店に通ってなかった?」と聞かれたことがあるんだけれど、私の記憶にはないんだよね。

「珈琲屋」が開店したのは1970年というから、私たちが高校に入った年のことだ。確かにジャズ喫茶には行くようになったが、私の記憶ではそれらはすべて平の店々だ。そもそも高校時代の、小名浜の商店街の記憶がほとんどない。あるのは街唯一の中型規模の書店と、いわゆるトルコ風呂街ぐらいかな。といってもトルコ風呂に通っていたわけではなく、そのど真ん中にあった友人(名前忘れた)の家によく遊びに行ってたのだが……。

 小名浜で映画ぐらいは観たろうとは思うのだが、それは小中学生までで、高校生ともなると映画を観るのももっぱら平の街だった。

「竹町通り」という地名もすっかり忘れていたのだが、同じく「いわき日和」の次の記事を読むと、うっすらと思い出す。友人を訪ねて通ったトルコ風呂街というのは、もしかしたら竹町通りのことではなかったか。安竜さんは次のように書く。

 いま小名浜では「竹町通り」が話題になっている。港の近くにイオンモール進出が決まり、港と町をつなぐために、この通りが整備されることになったのだ。イオンモールからタウンモールリスポまでの全長370m。数字にすればわずかな距離だが、地区民の意識は遠い。港と町はずっと別だった。 

 港と町の間には歓楽街が川のように横たわっている。スナック、バー、ソープランド…。そのあたりにはかつて、洋画専門の映画館が2軒あった。……

 「竹町通り」は幅員が4~6mの狭い道路だが、それを6m幅に統一してカラー舗装にする。道路を整備して新たなにぎわいが生まれれば、というのが行政の狙いで、住民たちの期待も大きい。はたしてうまくいくのだろうか。心配ではある。……

 「竹町通り」を歩いてみる。いまはほとんど何もない。せいぜいラーメンが評判の「味世屋」があるぐらいで、ひっそりとしている。かつては、この通り沿いの2階に「珈琲屋」というドリップコーヒー専門のジャズ喫茶があり、若者がたむろしていた。この店こそが小名浜文化の象徴だった。いまはその建物が壊され、空き地になっている。

「洋画専門の映画館が2軒」とあるが、金星座と銀星座のことだろうか。私の小学校時代の記憶では金か銀かどちらかが洋画館。そこで『ベンハー』を観た記憶は鮮明だ。だからきっと子供の頃に「竹町通り」そのものというより、その周辺を歩いたことはあったのだろう。小学生の兄弟を連れての映画鑑賞だから、母はきっとスナックやバーが蝟集する歓楽街は避けたのだと思うけれど。

 小名浜の映画館の話を調べていたら、こんなサイトに出会い、そこで井上ひさし元妻の西舘好子さんが、『小名浜ストーリー』という疎開時代の小名浜のことを書いた本があることを知った。Amazonの古本屋で注文したが、真砂図書館の蔵書にもそれはあった。

エッグベーカー

 テレビ(「猫のしっぽカエルの手」)を見ていたら、松江の「湯町窯」というところの焼き物に、エッグベーカーというのがあるらしい。いや、一種の小型のキャセロールであるエッグベーカーは昔からどこでもあるものだが、この町の手焼きのものが品質がいいらしい。

 面白いかもとネット通販で探すが、けっこうお高い。伊賀焼の長谷園にもう少し安いものがあった。ものは試しと小サイズを昨日、注文したら、今日にはもう届いていた。

http://img20.shop-pro.jp/PA01300/270/product/85154921.jpg?20150215145141

【写真】長谷園のエッグベーカー/ホワイト/小/ 2,160円

 さっそく卵を1個割り入れ、まずは電子レンジで加熱。500w×30秒では白身がまだ固まっていない。+20秒したらいい感じになったが、黄身が白身に埋没している感じ。 f:id:taa-chan:20171126195139j:plain

 食べてみるとふつうに半熟卵。レンジの火の回り方のせいか、白身の堅さに少々ムラがある。いつもの小さなフライパンで焼いた方が目玉焼きらしくはなるが、これも手間だというときにはこの陶器のエッグベーカーが重宝するかもしれない。器のまま食卓におけるのもポイント。

 トリセツをみると、魚介のアヒージョとか、バターコーンとか、砂肝のガーリックバターなど工夫次第でいろいろ使えるみたい。

 もちろん電子レンジだけでなく、焼き網の上におき直接ガスで調理することもできる。そのほうが手軽さには欠けるが、きっと焼き具合はいいんじゃないかな。

天皇制とLGBT

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 自民党の竹下亘総務会長は23日、国賓を迎えて天皇、皇后両陛下が開催する宮中晩さん会に関し「(国賓の)パートナーが同性だった場合、どう対応するのか。私は(出席に)反対だ。日本国の伝統には合わないと思う」と述べた。

引用:竹下・自民総務会長:同性パートナー出席反対 宮中晩さん会 - 毎日新聞

 この発言が波紋を広げている。Twitterなどの反応を見ていると、同性婚などへの個人的な差別意識を「伝統」という言葉でカムフラージュしているだけ、こいつは同性愛に寛容だった日本の社会文化の伝統を知らない、単に頭古いだけ...などという批判が多い。

 たしかにLGBTへの差別意識が前提になければこういう発言にはならないわけだが、私はむしろ、あえて宮中晩餐会に関しての発言であることに注意すべきだと思う。竹下は海外の首相に事実婚のパートナーがいたり、あるいはその人が同性婚だったりすること自体に異議を唱えているわけではない。彼らが国賓として天皇・皇后の隣に座ることを問題視しているのだ。

 つまり、海外がどうあろうと、日本社会がどう変わろうと、何千年にわたって男子の血を絶やさず、王権を世襲していく天皇制というシステムに、LGBTごときの入る余地はないと言いたいわけだ。「天皇制は男女による婚姻と生殖によって紡がれる血統を第一義にしているので、この伝統を汚すような連中には晩餐会には出席して欲しくない」というのが、竹下の言いたいことの本音だ。だが、そんな伝統などにこれっぽちの幻想も抱いていない海外の人は、この発言の本質をすぐに理解するだろう。つまり「天皇制はLGBTを差別するのだな」と。

 事実、天皇制はLGBTに限らず、あらゆる差別の元凶だった。現在の天皇家のひとびとがそうした差別意識を持っているかどうかではなく、天皇制の構造自体が身分差別を前提としてつくられてきたもの。そのことは、部落差別の歴史でもちょっとひもとけば誰にもわかることだ。

 竹下は、自主退位や女性天皇などが現実問題になって、激しく揺らぎつつある日本の天皇制の将来に、正しく危機感を抱く正真正銘の天皇システム信奉者だ。事実婚や同性婚などを認めれば天皇制の根幹が揺らぐ。下手をしたら日本民族は滅んでしまう、と本気で思い込んでいるのかもしれない。

 それにしても、外国の賓客などと言わず、国内でもこれからは事実婚や同性婚の人々が、政治や文化などさまざまな領域で増えるかもしれない。その場合もまた、彼らは園遊会やら晩餐会への出席を拒否されるのだろうか。

 ところで、この竹下発言に対して野田聖子はこう語ったという。

野田氏は会見で、「総務会長のお話の趣旨は、自民は開かれた多様な意見をぶつけ合える政党だと(いうこと)」とも述べた。

引用:野田聖子氏、竹下氏発言に異論 同性パートナー巡る発言:朝日新聞デジタル

 どういうふうに竹下発言を理解したら、「多様な意見をぶつけ合える政党」という話になるのか、私には皆目わからない。

チキンレース?

 私はよくサラダチキンをつくる。ヨーグルトとたまねぎすりおろしを揉み込んで、ラップとアルミホイルに包んで蒸し焼きするだけ。コンビニやスーパーに製品が並んでいるのは知っているが、自家製の方がよほど美味しいし、その都度スパイスを変えて味の変化を楽しめる。

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右上が自家製ヨーグルトサラダチキン
 ところで、「日経トレンディ」にこんな記事があった。

 ファミリーマートが2017年8月8日に発売した「RIZAP サラダチキンバー(以下、サラダチキンバー)」。近年、ジムなどで体を鍛えている男性の間で、サラダチキンをパックから出してバナナのようにそのままかじりつく食べ方が増えているのを受け、開発した商品だ。パーソナルトレーニングジムで知られるライザップの監修で、糖質を0gに抑え、食べやすいスティック状にした。

引用:サラダチキン戦争! 「そのまま」VS「参鶏湯」 - 日経トレンディネット

 ライザップとコラボなんて、コンビニがなんかすごいことになっている。

 ついでにこんな記事も。たしかに鶏むね肉って、昔はこんなに人気じゃなかった。

 昔からむね肉が好まれていた欧米と違い、つい最近まで日本ではジューシーなもも肉の人気が圧倒的に高かった。パサパサした食感のむね肉は敬遠され、売れ残りがちだったという。一羽の鶏にはほぼ同量のむね肉ともも肉がある。むね肉を売るための苦肉の策として生まれたのが、調理なしですぐ食べられるサラダチキンだった。

引用:サラダチキン“元祖”の開発秘話 皮を取って大ヒット  - 日経トレンディネット

モスキート・コースト

 19世紀前半、中米の新興国ポヤイス国への投資を煽った希代の詐欺師グレガー・マクレガーの話が、『世界をまどわせた地図』(日経ナショナル・ジオグラフィックス)という本に登場する。

 マクレガーはスコットランドの名家の出身で、戦争の英雄でもあった。現在のホンジュラスあたりに「ポヤイス国」という国があり、マクレガーはそこの「領主」という触れ込みだった。その肩書と巧みな弁舌に人々は魅了された。なんでもポヤイスでは、わずか11ポンドで100エーカーもの肥沃な土地が手に入る。川には砂金がごろごろ埋まっている。カネとコネ次第で政府高官への就任も可能だという。

http://nkbp.jp/2mxVZY9

 そのころ、欧州は不景気の中にあり、それを脱するために、投資家の間では中南米への投資が人気があった。ただ、まだ中南米は欧州から遠く、世界地図には欠陥があった。マクレガーが示すポヤイスの地図は不鮮明だったが、そういう国があってもおかしくはない程度には精巧にできていた。

 土地の譲渡委任状やポヤイス国の紙幣まで見せられると、ヨーロッパの銀行家から職人まで多くの人が、マクレガーの話を信じ込んだ。実際、入植のために船が仕立てられ、270人の移住者がポヤイス国があるあたりに渡った。もちろん、そこに待っていたのは、未開の密林とマラリアの発生源になりそうな沼地だけだった。

 マクレガーは人々を騙すために「モスキート・コースト国のジョージ・フレデリック・アウグストゥス王から授けられたという、まばゆいばかりのメダルと勲章」をぶらさげていたという。いつの時代にも人は金ぴかの勲章に弱い。

   と、そこまで読んで、驚いた。「モスキート・コーストだって? 」 そうか、そういうことなのか。

 アメリカの作家、ポール・セローはマクレガーとポヤイス国の詐欺話を知っていて、それで1982年に発表した小説のタイトルを「The Mosquito Coast」としたのだ。

 管理された資本主義を憎む発明家の男が、家族をつれて中米の密林に渡り、そこに理想郷を建設しようとして、挫折する話。

http://bit.ly/2mzsy86

 実は私は小説は読んでいない。ただ、1986年のピーター・ウィアー(Peter Weir)監督による映画化作品『モスキート・コースト』は見ている。夢想家の父親をハリソン・フォード、冷静な長男を、その4年後には亡くなってしまうリバー・フェニックスが演じた。たしか冒頭に父親が日本の工業製品を「ジャップ!」と叫んでぶち壊すシーンが登場する。日米貿易摩擦の頃の話なのだ。ようやく父の夢想から解放された一家が、筏に乗って静かに川を流れていく(ような)ラストシーンも覚えている。

 ウィアー作品はどれもいいものだ。75年の『ピクニックatハンギング・ロック』でその名を知った。第一次世界大戦のガリポリの戦いを描いた『誓い』はメル・ギブソン主演ということもあって、日本でもヒットした。『いまを生きる』『グリーン・カード』『トゥルーマン・ショー』もいい。『刑事ジョン・ブック/目撃者』は知られざるアーミッシュの生活を描き、ハリソン・フォードとケリー・マクギリスの名演もあって、私の人生映画100選にも選ばれている。2010年の『ウェイバック』以来は撮っていないのか、最近は名前を聞かないが。

「モスキート・コースト」という地名はもしかしたら実在するのかもしれないが、「モスキート・コースト国」や「ポヤイス国」という国家は、マクレガーの頃もセローやウィアーの頃も、いや世界史上にこれまで実在したことは一度もない。

 それらは見果てぬ夢と尽きぬ欲望を、そしてしたたかなペテンと裏切りを象徴する言葉なのだ。有象無象の輩がそれこそ無数のボウフラのように涌き、ヤブ蚊の大群で空は霞がかっている。偽史国家に惑わされる人類の社会的不幸というべきものの、それは言い換えともいえる。

若者の意識は保守化しているのか

「自民勝たせた若者の意識 「青春=反権力」幻想に」と題する毎日の記事。紹介されている大阪大の特任教授の調査データからは、2001年から12年間という短期間にも、高校生の意識が大きく変化していることがわかる。「これが40年前だったら……」などとカンブリア紀を振り返るような遠い目はしたくないが、もし1970年代の高校生に同じアンケートを取ったとすれば、半数は校則なんて関係ない、7割以上が太平洋戦争は間違っていた、6割ぐらいは日本文化以上に海外の文化に関心をもっていて、つまり棒グラフはまったく別の図を示していたことだろう。

 なんでこうまで変わるのか。記事でもさまざまな分析がされているが、これだというものがわからない。ただ、この変化に私は漠然とした恐ろしさを感じる。例えば大学の国際学部で海外比較文化論なんぞを担当する教授は、「日本の文化・伝統はほかの国よりも優れている」などとアプリオリに信仰する新入学生に対してどういう言葉をかけるのだろうか。

 高校生の意識の変化の背景には、もちろん論壇からテレビのワイドショーに至るまでの日本の政治・文化領域における右派の台頭があるだろう。テレビや新聞で「何度、謝れば済むんだ」と怒るオッサンとか、自己批判なき「日本すごい!」の、品性賤しき言葉の連発を見聞きしていれば、いかに愚鈍な若者でも、そんなもんだろうと思い込むに違いないからだ。私だって、高校・大学生のころは、西欧の社会モデルを理想として「やっぱりダメな日本」という日本批判の想念を頭に詰め込んでいた節があり、それは当時の、ネットもなく右翼メディアも今ほど隆盛ではなかった日本のオピニオン状況がたんに反映していただけかもしれないのだから。ついでにいえば、そうした観念を醸成するだけの社会的な騒乱の時代でもあった。

 ただ、こうした若い時の意識は、その後の社会体験、海外体験などを通して、少しは鍛えられた。いちおう少しの検証を経た後も、私のイデオロギーはけっして右派には転じず、かろうじて左派の一端に止まっている。それはそれでよいと今では思っている。

 若者の保守的・権威主義的・かつナショナリスティックな思想は、今後どのように変化するのだろうか。右派によるニッポン万歳三唱の怒号の前に、なんとなく糊が固まるようにそのまま原イデオロギーとして脳髄に固着してしまうのか、はたまた、何らかの現実的ショックを受けて、多少のギクシャクがあるのかどうか。いずれにしても若者の思想は自らによっていつかは検証され、反省され、さらにその上で発展しなければならないことだけはたしかだ。

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大阪大特任教授の友枝敏雄さん(社会学)の研究チームが、2001年から6年ごとに3回にわたり、福岡などの高校生延べ1万人超を対象に行った意識調査だ。グラフを見てほしい。例えば「校則を守るのは当然か」という質問に「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた生徒の合計が、68・3%(01年)▽75・4%(07年)▽87・9%(13年)と大幅に増加。さらに「日本の文化・伝統はほかの国よりも優れている」への賛意は、29・6%(01年)▽38・7%(07年)▽55・7%(13年)と年々伸び続けているのだ。

特集ワイド:自民勝たせた若者の意識 「青春=反権力」幻想に - 毎日新聞 https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171113/dde/012/010/012000c

心が寒くなるニュース

 最近はニュースを聞いても、うんざりというか、心が寒くなって、もう何も触れたくなくなるようなことが多くてねえ。アベとトランプの蜜月報道とかが典型だけれど。

 教育関連ニュースから3つ。

学校側は生徒の代理人弁護士に「たとえ金髪の外国人留学生でも規則で黒染めさせることになる」と説明している。 損賠訴訟:地毛茶髪、黒染め強要 高3提訴 心身に傷、不登校に 修学旅行、締め出し 大阪の府立高- 毎日新聞

 黒染め訴訟のニュースに関連して「地毛証明書提出」という制度というか戒律があることを初めて知った。 「都立高(全日制)の約6割が、髪の毛を染めたりパーマをかけたりしていないかを見極めるため、一部の生徒から入学時に「地毛証明書」を提出させているという内容でした。裏付けのために幼少期の写真を求める高校もあり……」 「地毛証明書」「無言給食」 学校のルールを考える:朝日新聞デジタル

https://www.bengo4.com/topics/img/6313_2_1.jpg?1494029387

 なんという馬鹿馬鹿しさ。無駄な努力。

 生徒に地毛証明書なら、教員には「自己分析支援チェックシート」か。

長野県教育委員会は9日、教職員らによるわいせつ行為が昨年度、続いたことを受け、自らの性的嗜好を確認する「自己分析支援チェックシート」を導入すると発表した。相談窓口も設置し、犯罪行為の防止を図る。 わいせつ行為防止:教職員に自己分析シート導入 長野- 毎日新聞         

 あれだけ疑念が残っているのに、開校ですか。これは一種のホラーだ。   

林芳正文部科学相は10日、諮問機関の大学設置・学校法人審議会(設置審)から学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設を認可するよう答申を受けたと発表した。答申は9日付。文科相は近く認可する方針で、来年4月の開学が可能になる。文科省は、設置審が審査過程で、計画に多くの是正意見を付け、抜本的改善を求めていたことも明らかにした。 加計学園:設置審、獣医学部の新設答申 文科相、近く認可- 毎日新聞   

 文字通り背筋が凍るのはこれだろうな。もはやホラー映画の世界を超えている。心のない殺人者。

神奈川県座間市のアパートから9人の遺体が見つかった事件で、死体遺棄容疑で逮捕された白石隆浩容疑者(27)が被害者について、「3人目以降は顔も覚えていない。名前も(ツイッターの)ハンドルネームしか分からない」などと供述していることが捜査関係者への取材で分かった。 座間9遺体:「3人目以降、顔も覚えていない」容疑者供述- 毎日新聞

 先週、出張で山口県萩市に。萩は30年ほど前、一度、やはり出張で行ったことがある。そこで萩焼の湯飲みを買った記憶はあるのだが、街並みなどよく覚えていない。

 古い城下町のたたずまいを保存する美観地区。人々の生活の匂いはしないが、そぞろ歩きは面白かった。今回もひとつ、萩焼のご飯茶碗を買う。

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日本映画いくつかと期待の監督たち

『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』

(2007/吉田大八監督/佐藤江梨子/佐津川愛美/永瀬正敏/永作博美)

 吉田監督は『桐島、部活やめるってよ』でブレイク。宮沢りえの『紙の月』、菅野美穂の秀作『パーマネント野ばら』、堺雅人の『クヒオ大佐』もこの人。(★★★) f:id:taa-chan:20170906173400j:plain

『湯を沸かすほどの熱い愛』

(2016/中野量太監督/宮沢りえ/杉咲花/オダギリジョー/篠原ゆき子)

 今年度のアカデミー賞外国語映画賞の日本代表に選出。まだ若手の監督だが宮沢りえ、杉咲花の演技力を引き出した手腕はすごい。『チチを撮りに』という2012年の作品も見たい。(★★★★) f:id:taa-chan:20170906173338j:plain

『SCOOP!』

(2016/大根仁監督/福山雅治/二階堂ふみ/吉田羊/リリー・フランキー/滝藤賢一)

 想像以上に面白かった。(★★★★)  福山が風俗で女の子のおっぱいをモミモミするシーンなんか、これまでの福山ファンの乙女たちにはショッキングな映像かもしれないけれど、ここまでやって、ようやく福山の演技は一皮剥け、男優としての存在感もより濃厚ブラックになった感じがする。

 二階堂ふみはその自意識過剰なところがちょっと苦手だったが、ここでの演技はいい。

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 キネ旬の『キネマ旬報ベスト・テン90回全史1921-2016』をKindle本で購入。他に是枝裕和監督の『第三の殺人』がフューチャーされている、キネ旬の9月下旬号を紙で購入。

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