小石川日乗Hatena版

おっさんがよしなしごとを書き散らします

コンプラは天ぷらにして食うのがいい

関西電力の役員らが福井県高浜町の元助役から多額の金品を受領していた問題は、同社のコンプライアンス(法令順守)意識の欠如を露呈した。問題が起きた主な原因は、金品を受け取ったことに加え、その管理を個人に任せていたことだ。同社はその後の社内調査と社内処分の詳細を示しておらず、公的な性格が高い電力会社に求められる姿からはほど遠い。

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 電力産業と地域の実力者との関係は、昔からズブズブだった。国策としての電源開発推進のために電力会社からの地域への利益供与が行われ、地域からは発電所建設のための土地提供、稼動容認、ときには「事故の受忍」といった便宜が図られる。電力産業は過疎地における地域振興の要であり、電力産業と地域の利害は、さまざまな矛盾を覆い隠したまま、一致するのである。そうした矛盾が今回の工事資金の環流、一種の「贈賄」事件であらためて露呈した。

 宴会の席に「あいさつに来い」と呼ばれ、金品受領を断ると「俺の顔を潰す気か」と凄まれって、関電が相手にしていたのは、どんな大物ヤクザなのか。菓子箱を開けたら底にピン札がぎっしりみたいな、何十年も前の映画のような話が、2010年代の日本でまだ起こっている。

 ところで、日経記事にもある「コンプライアンスの欠如」だが、関西電力に限らず、日本の大手企業は2000年頃からコンプライアンスに熱心に取り組むようになった。一度、何らかの法令違反を犯した企業ほど、それに熱を入れる。それは一種のブームのようでもあった。当時はまだ「コンプライアンス」という言葉は耳慣れず、それを聞くとわざと「えっ、テンプラアイスって何?」などと揶揄したものだ。

 関西電力もまた、「CSR行動原則」なるものの一つに「コンプライアンスの徹底」を掲げる。「前例にとらわれず、自ら考え行動する自律的なコンプライアンス推進」がコンプライアンス推進の基本方針の一つなのだそうだ。CSRに対する全従業員アンケートでも、「日ごろコンプライアンスを意識して行動しているか」という問いに社員の95.8%が「意識している」と答えている。

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 ほんまかよ、と思う。いや、社員の95.8%は意識しているとしても、残りの役員は意識していなかったのかもしれない。「コンプラ委員会」やら「コンプラ相談室窓口」やら、たいそうな組織体制を組み、たいそうな理念を掲げるものの、「コンプラの徹底」ができていなかったのだから、この先、どうしたらいいんだろう。そんな条文、もはや天ぷらかキンピラにでもして食うしかないではないか。いずれにせよ、こうした事件が発覚すると、企業が謳うたいそうなご説が白々しく見えてくる、というか、笑えてしまうのは、悲しいことではある。

 

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