NHK朝ドラ「ひよっこ」の「兼平豊子」役の藤野涼子について、先にこういう感想を述べた。
映画『ソロモンの偽証』のあの中学生ではないか。映画初出演なのに圧倒的な演技力で度肝を抜かれた。しばらく学業に専念かと思ったが、あれだけの逸材だ。引く手あまただったのだろう。
というわけで、後れ馳せながら、彼女が『ソロモンの偽証』の後に出演した、黒沢清監督の『クリーピー 偽りの隣人』(2016年)という作品をWoWoWで観ることにした。
藤野は主人公が新たに転居してきた家の隣人、西野家の娘(澪)という役どころ。この「西野」という男がサイコパスの曲者で、実の親子のようにふるまっているが、ほんとは赤の他人。澪の本当の家族と家は、この男によって完全に乗っ取られている。他の家族の運命も悲惨だが、生きているこの娘もなんらかの方法で思考と行動をコントロールされている(このあたりは、まあ、ネタバレの範囲外だと思うので、記してみた)。
娘だけが難を逃れた、6年前のまったく別の一家失踪事件との共通点が、ここにあった。
前川裕の原作は読んでいない。読めばもっと物語の背景がわかり、映画ももっと怖ろしげに楽しめたのかもしれないが、小説の構造を消化し切れていないのか、それとも黒沢監督なりの説明しない美学があるのか、あんまり怖くないんだな。
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