ドナルド・トランプ米大統領は8日、高級百貨店ノードストロムが娘イバンカさんの名前を掲げたファッションブランドの販売を中止したことについて、ツイッターで同社を批判した。これに対して民主党は、公私混同の不適切なツイートだと強く非難している。
トランプ氏、娘のブランド販売中止で百貨店攻撃 民主党は非難 - BBCニュース
これは喜劇なのか、悲劇なのか。アメリカの「いわゆる大統領」周辺で巻き起こる珍事。トランプのTwitterは政治的な観点から見てけっして「正しく」ないが、ポリティカル・コレクトネスの欺瞞をぶちやぶろうとする大統領にとっては、「正しい」行動なのだろう。それがチャレンジブルかつワイドショー的に面白いので内外のニュースメディアも書き立てる。むろんそれは大統領の政治倫理を問題視するからではあるが、それでも大統領は反撃を止めない。何があってもけっして人に謝罪することがない(上辺は別にして)、傲慢な人間がたまにいるが、トランプはきっとそのタイプの人なのだ。
トランプはテレビのニュースやバラエティショーやゴシップ週刊誌に格好の餌を撒くことで、好き嫌いはともあれ常に話題の中心に居続ける。日本にも橋下某という似たようなタイプの政治家がいる。ワンフレーズ小泉氏もこうした「テレビ・ポリティクス」に長けていた首相の一人だ。ポピュリズムの政治家に共通する資質といっていいかもしれない。
トランプが大統領選挙に勝った晩は、例によって私は行きつけの飲み屋にいたのだが、そこで会ったテレビ・プロデューサーと週刊誌編集者がともに「これは面白くなりましたね」と同じフレーズを言うのに少し驚いた。しばらくはそれで「食える」、商売のネタが登場したということなのだ。
しかし、やがてトランプは飽きられる。人々はもっと面白い話題を求めていく。そして数年後に人々の目の前にあるのは、もっとずっと低レベルのポリティクス、倫理そのもののが酷く荒廃した風景だ。目の前の緑がすっかり枯れ果ててしまっていることに、人々はもしかしたら気づかないかもしれないのだけれど。
ちなみに、ホワイトハウスのショーン・スパイサー大統領報道官って誰かに似ているなと思ったら、『ターミネーター2』の液体警官役のロバート・パトリックだった。ともに冷酷なアンドロイド顔という意味で。