小石川日乗Hatena版

おっさんがよしなしごとを書き散らします

リオ五輪

 今日は台風で蒸し蒸しするだけでなく、朝からなぜかイライラする。それもこれも、地球の裏側で行われた「安倍・マリオ・晋三」のわざとらしいパフォーマンスを、ちらっとテレビで見してしまったからだ。


 勝っても負けても報道が狂奔するのはオリンピックの常套だが、今回のNHKは尋常ではなかった。まさに「全力」で五輪と高校野球しか報じない夏の2週間だった。北京やロンドンのときはこんなではなかったと思う。民放は放映権獲得でNHKに負けたのか、ライブ中継はほどほど。ただ、金メダルネタを何十回とリピートしては、視聴者に感動と涙と笑いを強要するワイドショーは見ていて恥ずかしくなるほどだった。


 このポエムな2週間を最後に締めたのが、安倍の道化だというのだから。これではせっかく政官財+メディアが盛り上げたオリンピック熱も台無しだろうよ。


 いまどき、オリンピックを国境を超えた「人類の祭典」などとノーテンキに考える人はほとんどいないだろう。いや、実際にはお祭りなのではあるが、日本語では「政」と書いて「まつりごと」と読むように、お祭りには政治と商売がつきものなのだ。それは、サーカスにはピエロがつきものなのと同じ。ピエロのような安倍の姿が、はしなくもそれを象徴してしまったのである。


 小池の登場の前にスピーチしたのはリオデジャネイロ市長だったかな、病気なのか緊張のせいなのか、原稿をもつ手が始終震える。ぶるぶる震えながらの熱狂的な演説は、いかにリオが成功したかという話ばかりだ。「リオ市民よ、あなたがたは成功者だ!」という下りではスタジアムは万雷の拍手。安倍のパフォーマンスと同様に、なんかとても異様なものを見たような気になった。


 開催前にはリオ五輪の成功どころか、開催さえ危ぶむ声もあった。市民の半数が開催に反対しているという報道もあった。

 8月3日付のハフポストは、リオ開催に反対もしくは複雑な感情を抱いている市民の表情を伝えていた。「リオオリンピック、地元の人たちはどう思う?「偽善だ」「間違った投資」 一方で期待する人も」


 写真の親子が掲げるフリップには、「ERRADO」(ふさわしくない)と書かれている。











 開催後も、選手村のひどい実態や強盗被害の話が伝わってきていた。報道の潮目が変わったのは、

米国の水泳メダリストらの強盗被害が狂言だと明らかになってからだろう。たしかにこの狂言騒ぎはリオデジャネイロ市民の感情を傷づけるものだった。しかし、だからといって他の治安問題が存在しなかったことにはならない。


 オリンピックに反対した半分の人々、おそらくこの日スタジアムにいなかったリオ市民の声は、いまどうなっているのか。「以前は反対だったがやってよかった」のか、それとも「やっぱりやるべきではなかった」と考えているのか。オリンピックでひと儲けした輩がいる一方で、その恩恵をこうむるどころか、財政負担を転嫁される市民も確実に存在する。今それを報じるメディアはほとんどない。閉会式で対立はみな帳消しなのか。あのすばらしいアート・パフォーマンス(安倍を除く)の前に、オリンピックのもつ「まがまがしさ」は、なかったことにされてしまうのか。


 むろん私にも好きなスポーツはあるし、それをテレビで観戦するのは、私のライフスタイルの一部である。オリンピックを純粋にスポーツ観戦として楽しむ余裕がなかったとはいわない。


 W杯ほどの熱狂には至らなかったものの、サッカー男子決勝戦は前回のW杯決勝再現のおもむきがあって、延長戦終了までは食い入るように生で見ていた。PK戦はあえて見なかったが、それでも結構楽しめた。

 卓球やバドミントンも見た。特にバド女子ダブルスの「タカマツ」コンビの決勝戦、最後の連続ポイント奪取には手に汗を握った。陸上男子400mリレー決勝も見た。柔道やレスリングも見た。

 オリンピックはふだん見ることの少ないスポーツ競技を堪能できるまたとない機会であることもたしかだ。セーリングとかカヌーとか射撃とか、マイナースポーツもルールが理解できるようになると味わい深い。


 総じて、朝起きて学校や会社に行かなければいけない人たちよりは、オリンピックのライブ視聴時間は多かったかもしれない。


 だからあえて言うが、私はオリンピックが嫌いなのではないのだ。自分がひそかにテレビをみながら感動したり、嘆いたり、文句をつけるのはいいのだ。ただ、人に感動を煽られるのが嫌いなだけなのだ。権力者に利用されるのがほとほと嫌なだけなのだ。


 この調子だと4年後の東京はどうなってしまうのだろう。テレビも新聞もオリンピックだらけ。政権党はオリンピックを政治宣伝に最大限利用するだろう。感動する前に辟易するのがオチだから、この時期はどこか涼しい海外のリゾート地でも出かけて、のんびり地元TVで観戦するのが吉かもしれない。

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