小石川日乗Hatena版

おっさんがよしなしごとを書き散らします

天皇制とLGBT

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 自民党の竹下亘総務会長は23日、国賓を迎えて天皇、皇后両陛下が開催する宮中晩さん会に関し「(国賓の)パートナーが同性だった場合、どう対応するのか。私は(出席に)反対だ。日本国の伝統には合わないと思う」と述べた。

引用:竹下・自民総務会長:同性パートナー出席反対 宮中晩さん会 - 毎日新聞

 この発言が波紋を広げている。Twitterなどの反応を見ていると、同性婚などへの個人的な差別意識を「伝統」という言葉でカムフラージュしているだけ、こいつは同性愛に寛容だった日本の社会文化の伝統を知らない、単に頭古いだけ...などという批判が多い。

 たしかにLGBTへの差別意識が前提になければこういう発言にはならないわけだが、私はむしろ、あえて宮中晩餐会に関しての発言であることに注意すべきだと思う。竹下は海外の首相に事実婚のパートナーがいたり、あるいはその人が同性婚だったりすること自体に異議を唱えているわけではない。彼らが国賓として天皇・皇后の隣に座ることを問題視しているのだ。

 つまり、海外がどうあろうと、日本社会がどう変わろうと、何千年にわたって男子の血を絶やさず、王権を世襲していく天皇制というシステムに、LGBTごときの入る余地はないと言いたいわけだ。「天皇制は男女による婚姻と生殖によって紡がれる血統を第一義にしているので、この伝統を汚すような連中には晩餐会には出席して欲しくない」というのが、竹下の言いたいことの本音だ。だが、そんな伝統などにこれっぽちの幻想も抱いていない海外の人は、この発言の本質をすぐに理解するだろう。つまり「天皇制はLGBTを差別するのだな」と。

 事実、天皇制はLGBTに限らず、あらゆる差別の元凶だった。現在の天皇家のひとびとがそうした差別意識を持っているかどうかではなく、天皇制の構造自体が身分差別を前提としてつくられてきたもの。そのことは、部落差別の歴史でもちょっとひもとけば誰にもわかることだ。

 竹下は、自主退位や女性天皇などが現実問題になって、激しく揺らぎつつある日本の天皇制の将来に、正しく危機感を抱く正真正銘の天皇システム信奉者だ。事実婚や同性婚などを認めれば天皇制の根幹が揺らぐ。下手をしたら日本民族は滅んでしまう、と本気で思い込んでいるのかもしれない。

 それにしても、外国の賓客などと言わず、国内でもこれからは事実婚や同性婚の人々が、政治や文化などさまざまな領域で増えるかもしれない。その場合もまた、彼らは園遊会やら晩餐会への出席を拒否されるのだろうか。

 ところで、この竹下発言に対して野田聖子はこう語ったという。

野田氏は会見で、「総務会長のお話の趣旨は、自民は開かれた多様な意見をぶつけ合える政党だと(いうこと)」とも述べた。

引用:野田聖子氏、竹下氏発言に異論 同性パートナー巡る発言:朝日新聞デジタル

 どういうふうに竹下発言を理解したら、「多様な意見をぶつけ合える政党」という話になるのか、私には皆目わからない。

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