小石川日乗Hatena版

おっさんがよしなしごとを書き散らします

江戸東京たてもの園

 小金井市の小金井公園の中にある野外博物館「江戸東京たてもの園」。初めて行った。予備知識が全然なかったから、「なんか歴史的建造物のミニチュアか、レプリカが置いてあるのかな」と思っていたが、意外にもホンモノをほぼ原型通りに移築・復元している。

 東、西、センターの3つのゾーンがあり、センターゾーンでは「高橋是清邸」、西ゾーンでは「前川國男邸」「田園調布の家(大川邸)」「小出邸」「三井八郎右衛門邸」などがそれぞれ興味深かった。大正・昭和のモダン建築も建物の全体容量のわりにはキッチンが意外と狭かったり、三井邸は財閥三井本家の偉容がこれみよがしで、「さすが越後屋よのぉ〜」と思ったり……。

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 わけても興味を惹いたのが、東ゾーンの看板建築群だ。「村上精華堂」は池之端にあった小間物屋で、復元されているのは、関東大震災後に建てられ、戦後も店舗として使われていた建物。イオニア式のオーダー(柱・梁の形、寸法を基準にした構成様式)を、しかも多層に積み上げている。近代建築レストラン散歩 ●村上精華堂(江戸東京たてもの園)によれば、柱も柱頭も石造ではなく型枠にモルタルなどを流し込んで作ったものだという。

 建築学的には素人デザインかもしれないが、そのファサードは端正な美しさを宿している。それが雨上がりの武蔵野の空に映える様子は、神々しいまでであった。建物があった池之端2丁目の跡地はいま「日増屋」という中華料理店になっているらしい。

 もう一つ「丸二商店」は昭和初期に神田神保町にあった荒物屋。大妻女子大のライフデザイン学科の学生による解説では、

銅板の貼り方に5通りあり、しかもその文様は、江戸小紋のパターンであるらしいです。 「亀甲」「杉綾目」「青海波」「網代」「一文字」となっていたみたいです。 側面外壁は押し縁下見板張りで、これは和風長屋の代表的な構造でした。

 とのこと。細部がまた見事なんだわ。

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南インドカレー

 日曜日の遅いランチは、水道橋にたしか昨年オープンした、南インド料理の「シリ バラジ」(Sri Balaj)

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  • 羊肉のカレー(マドラスの家庭料理) 1,500円
  • バスマティライス 500円
  • ラッシー 500円

 締めて2,500円とランチにしては安くはないが、タミール風のスパイスがよく効いて、ラム肉も新鮮で柔らかく、カレーの街・神保町のなかでもハイクラスの逸品といえる。

 薫風さわやかな午後3時過ぎ、ポール・マッカートニーの東京ドーム公演があるとかで、壱岐坂下からドーム楽屋口に至る歩道には、“入り待ち”の客が溢れかえっていた。

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映画『1001グラム ハカリしれない愛のこと』

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 メートル原器やキログラム原器というものがあることは知っている。長年、度量衡の科学的な意味での基準になっていた。キログラム原器の実体はプラチナ・イリジウム合金の分銅。表面吸着などの影響で質量が増加したり、洗浄するとまた微妙に質量が変化したりするらしい。変化といっても、µg(マイクログラム:1マイクログラムは100万分の1グラム)単位の微小なものだが、日常生活はともかく、サイエンスの世界では重要な変化ではある。

 そこで近年、人工物に頼るのではない、より正確で安定的な定義が求められていた。

2011年10月21日に国際度量衡総会(CGPM)において、キログラム原器による基準を廃止し、新しい定義を設けることが決議された。 この決議を実現するために、キログラムをプランク定数 h によって定義することが2013年12月に提案された。……しかし、2014年11月18 - 20日に開催されたCGPMでは、プランク定数の精度が十分でないことなどにより上記の定義への変更はなされず、次の2018年開催予定の第26回CGPMに向けて定義変更のための諸課題を解決すべし、との決議が採択された。

キログラム - Wikipedia

 前置きが長くなったが、映画『1001グラム ハカリしれない愛のこと』はこの「国際キログラム原器」が舞台の重要なアイテムになっている。

 主人公のマリエはノルウェーの国立計量研究所に勤務する研究者という設定。各国に配布された原器の、ノルウェー版複製を保管する組織だ。この複製原器は約40年ごとに特殊な天秤を用いて国際キログラム原器と比較されることになっている。マリエは病に倒れた父(も同研究所の研究者)の代理で、その定期較正のためにパリを訪れる。

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英国と中国結ぶ初の貨物列車

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 いささか旧聞に属するが、こんなニュースをこの前クリッピングしていた。

www.afpbb.com

 全長約600メートル、全32車両の貨物列車は、ウイスキーやソフトドリンク、乳幼児用品などを積んで広大な貨物港ロンドン・ゲートウェイ(London Gateway)を出発。中国東部沿岸の浙江(Zhejiang)省義烏(Yiwu)へ向かった。

 

 この列車は、中国が掲げる現代版シルクロード構想「一帯一路」の一環で、1月18日に中国から衣料品などを積んで到着した往路便と同じく1万2000キロを18日間かけて走破する。鉄道輸送は航空輸送よりも安く、海運よりも速いため、物流企業は新たな中間的選択肢を手にすることになる。

   

 欧州連合(EU)を離脱することで独自の貿易協定を自由に結べるようになる英国にとって、中国との貿易強化は最優先事項だ。英国政府は初めて中国へ向かうこの輸出用列車を、EU離脱後の貿易関係を再編する「グローバルブリテン」計画の一環だとして称賛している。©AFP/Robin MILLARD

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「ひよっこ」に「小名浜中学」が……

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 NHKの朝ドラ「ひよっこ」の今週は、主人公の谷田部みね子(有森架純)が、働いて家に仕送りをするため、かつ出稼ぎ途中で行方不明になった父を探すため、集団就職で上京するというエピソードだった。土曜日の回を見て、たまげた。

 集団就職の中学生や高校生を乗せて上野に向かう常磐線の列車。席が近くだったことから知り合った中学生は「なばためすみこ。ふくしまの、いわきの、おなはまちゅうがく出身です」と自己紹介する。

「なばため」は「青天目」と書く。ふつうは読めないと思うが福島に多い苗字だ。むしろ「なまため」と読んで「生田目」と当てることが多く、たしか私の小学生のころの友人か教師にそういう苗字の人がいた。

 私がさらにぶったまげたのは、「おなはまちゅうがく」だ。「おなはま」は字幕からも明らかなように「小名浜」のこと。「小名浜中学」は実在しないが、「小名浜第一中学校」「小名浜第二中学校」は、ドラマの設定の昭和40年(1965)にも実在したし、今もたぶんある。私は「小名浜第一中」の出身だ。

 その小名浜の中学生・青天目澄子(松本穂香)は出身を「いわき」と話すが、1965年時点ではまだ14市町村の大同合併は行われていない(合併は翌1966年)ので、この場合は合併に参加した市の一つ、漢字で書く「磐城市」を指していることになる。

 65年時点での中学3年生だから私の先輩にあたる女の子は、おそらく常磐線「泉」駅あたりから集団就職列車に乗り、日立駅からは「茨城県立常陸高校」(これも似たような名称の高校はあるが、実在しない)のみね子たちと同じ車両に乗り合わせた、という設定なのだろう。

 Wikipedia によれば「集団就職列車」は、「1954年(昭和29年)4月5日15時33分青森発上野行き臨時夜行列車から運行開始され、1975年(昭和50年)に運行終了されるまでの21年間に渡って就職者を送り続けた」という。

 青森や岩手、宮城からの就職生も同じ列車に乗り合わせることがあったのだろうか。私の郷里の小名浜からもその列車に乗る中学生がいておかしくないが、子どものころそういう話を周囲で見聞きしたことはない。小名浜は沿岸部に工場地帯があり、中高生の就職先も、いわき市の農村部に比べればまだ潤沢にあったほうではなかったかとも思うが、確証はない。

 それにしてもなんで小名浜なのか。他にもいわき市にはたくさん中学校があると思うのだが……。ともあれ朝からびっくりさせられた。

「人生は夕方から楽しくなる」金田一秀穂

人生は夕方から楽しくなる:国語学者 金田一秀穂さん - 毎日新聞

 インタビューのシリーズタイトルだけれど、いい言葉だな。

 ワタシ流に解釈すれば、「人生は夕方から飲みに行けるから楽しい」となるんだけれど(笑)。

 63歳の「高等遊民」、金田一先生。

立ち返るべき精神は「温故知新」という。「皆さん、古典を読んだらいい。年を取るとその良さが素直に分かる。古典を学ぶ最大の目的は、昔の人も今と同じようなことを考えていたと知ることだと思うんです」。だが、若者にはその面白さが伝わりづらい。古典と若者をつなぐ教材に挙げるのが、古今和歌集にある小野小町の和歌だ。

 <思ひつつ寝ればや人の見えつらむ 夢と知りせば覚めざらましを>

 この恋歌、夢を通じて少年と少女が出会う新海誠監督のヒット映画「君の名は。」のモチーフになった。

 古今和歌集とヒットアニメの接点。金田一氏が「君の名は。」を参照したのか、記者の視点でつけくわえたのか、記事からはよくわからないが、いずれにしてもこうした古いものと新しいものを「接続」する視点は知的だ。

 文化的伝統は共同体にとって貴重な資源である。ところが近年は保守政治家が「文化学芸員」の仕事を悪性腫瘍扱いしたり、当の学芸を守るべき図書館員が著名な知識人から寄贈された蔵書をいとも簡単に廃棄したり、まるで「図書館戦争」みたいな状態になっている。

 そうでなくともいまどきの保守主義者らは、共同体を野放図な資本の力で徹底的に破壊しつつ、たかだか150年の過去を伝統と言い募っては、それを起点にして現代の「復古革命」を果たそうとする。本当の保守というのは、伝統に学びながら現代の意義を豊かにする態度のことだ。復古と保守は全然違うんだよ。

Day One 2.1.8と日本語入力問題

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 いまや欠かせない存在になっている日記アプリ「DayOne」の新しいバージョン(2.1.8)とMacの日本語入力システムとの相性が悪い。変換後の文字列が選択されたままになってしまい、新しい入力をするとその文字列が消えてしまう。ATOKとAppleの日本語入力IM(旧名ことえり)で確認。日本語入力IMではライブ変換をオンにするとまだましなんだが……。

 いったん直前のバージョン(2.1.7)に戻そうと思ったが、「永続ストアの移行中にエラー」などとアラートがでて、起動しない。

 2.1.8の問題はAppStoreでのレビューでも何件か報告されている。変換直後にテキストツールバーが表示されるのが原因ではという指摘もあるが、必ずしもその問題ではないような気がする。  つたない英語で、Day One にバグレポートを送ったら、開発チームの Adam氏からさっそく返信があって、

This is a known issue and we are investigating it. We hope this will be resolved soon. Thanks for your patience.

 とのこと。すぐに直ると思う。

 2.1.8では「Drag-and-drop photos functionality for entries and Timeline in read mode」など重要な変更が行われていてこれは嬉しいんだけれどもね。

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ゴッサム・シティ

 ふと2003年頃の古い日記を読み返していたら、感慨深いものがあった。俺ってあの頃、めちゃくちゃ仕事してたんだな。睡眠2時間で取材に行って、妙な時間に仮眠して、また原稿を書いて、夜の飲み会にも出かけて、みたいな生活の繰り返し。仕事量は今の10倍ぐらい(笑)。いわゆるバブル時代ではないが、リーマン・ショックのずっと前。カネも稼いだが、使うのも派手だった。それが今頃になってたたっている。

 そんな多忙な折に、汐留再開発で新しくなった「電通」本社を訪問したときの描写。

朝起きてから、A社のコピーをちらほら書いて、デザイナーに渡す。午後からD社の仕事で、大江戸線に乗って、汐留再開発地区の電通へ。この一帯は初めて来るが、何がどこにどうあるのか全然わからん。電通本社ビルで、ものすごいスピードのエレベーターを乗り継いで30階へ。心理的には、バットマンのゴッサム・シティのイメージ。資本主義アドバタイジング・ビジネスの悪の巣窟。その悪が社会に悪をば らまく。ま、ワシも売人の一人ではあるけれど(笑)。

 我ながら「ゴッサム・シティ」の比喩は絶妙。悪の巣窟に通う若手社員は心身ともに疲弊して、社員寮のマンションから飛び降りてしまった。きっと悪魔に身を任せることが下手だったのだろう。

中世日本の予言書

中世日本の予言書―“未来記”を読む (岩波新書)

中世日本の予言書―“未来記”を読む (岩波新書)

 興味アルアル。

 著者には下記の著作もあり、

『野馬台詩』の謎―歴史叙述としての未来記

『野馬台詩』の謎―歴史叙述としての未来記

 それを紹介するAmazonの【著者からのコメント】ではこう書いている。

中世フランスのノストラダムスが第二次世界大戦や世界の終末を予言していたという、難解な予言詩がはやったことがありました.しかし、このような予言書は、古来よりヨーロッパのみならず、アジアの中国や日本にもあったのです.日本では、聖徳太子の書いたという未来記が特に有名ですが、それよりも古く、日本の終末を予言したとされる『野馬台詩』がありました.漢字を5字ずつ24句連ねただけの短い詩ですが、この詩をめぐっていろんな解釈や物語、説話が生み出されました.本書はこの『野馬台詩』が中国から日本にどのように伝わり、どのように読まれ、どう影響を及ぼしたかを、時代ごとに追究してみたものです.

 『野馬台詩』それ自体は寓意に満ちた短い詩にすぎませんが、それを読む人が「やまと」(日本の古称)の由来を示すのだとか、天皇百代で日本は滅ぶのだとか、あれこれ注釈をつけていきました.その注釈をながめていくと、源平合戦や応仁の乱をはじめ、時代の転換にかかわる出来事が多く、日本の歴史が予言を通して語られていることが分かります.未来の予言が過去の日本の歴史を浮かびあがらせてしまう、そういう逆説的な歴史のとらえ方があったのです.歴史は教科書にみるような実証的な因果関係で書かれるものと思っている人が多いでしょうが、未来の予言を借りて歴史を説いたり書いたりする、時間を自在に行き来する方法があったのです.未来記は歴史を記述する方法が決してひとつではなく、実に豊かでさまざまにあったことを教えてくれるのです.

「未来の予言を借りて歴史を書く」というのはいったいどういうことだろうか。ずっと実証史学に慣れていて、それが当たり前だと思っていた私の頭に、この本は新しい刺激を与えてくれるかもしれない。

防空法啓発ポスター

www.digital.archives.go.jp

昭和12年4月公布された防空法は、<中略>防空業務として、灯火管制、消毒、防毒、避難、救護と、これらの実施に要する監視・通信・警報を規定し、灯火管制実施時に限り、国民に灯火を制限する義務を負わせました。防空法施行に伴い内務省に新設された防空課が、当面の課題の1つとして位置づけたのは、国民に「防空思想」を浸透させることでした。

 ワオ、これはすごいや。まるでここ数日、北のミサイルへの備えをとくとくと説くテレビワイドショーみたいだ。

 国会公文書館のページについては、早川タダノリ氏経由、大前治弁護士のTwitterで知った。

 NHKの朝ドラ「ごちそうさん」で主人公の夫(東出昌大)が逮捕されるというエピソードがあったが、これはこの防空法がらみ。防空訓練で、「空襲の火は消せない。消火せずに逃げよ」と住民の前で叫んだことが逮捕の理由だった。NHKのドラマって、当時のことをけっこうちゃんと描いているんだと、そのとき思った。詳しくはこのサイトを参考。

 大前氏には以下の著作がある。

ぬかよろこび

digital.asahi.com

 旬を迎えているタケノコが不作だ。年ごとの収穫量にばらつきがあるものだが、今季は全国的に過去に例のないほどだとの声も。ゴールデンウィークを前にタケノコ掘りを休止する観光農園もある。  

 げっ、ヤバい。たしかに先月買ったタケノコも1000円以上した。出始めだから高いのだと思ってたけど。この前ヌカをいただいたのに、茹でるべきタケノコがないとは、とんだヌカ喜び。

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