今村雅弘復興相は4月25日、東京都内の自民党二階派のパーティでの挨拶の中で、東日本大震災の人的被害、社会資本の被害について説明した中で「これはまだ東北で、あっちの方だったから良かった。これがもっと首都圏に近かったりすると、莫大なですね、甚大な被害があったと思う」と述べた。朝日新聞デジタルなどが報じた。
この人、まだ大臣やってたの? 先の「自主避難者は自己責任」発言で十分、復興相の資質がないことが判明したはずなのに。
だから今さらこの発言については私は目くじらは立てない。しかし言葉足らずという感はする。「まだ東北で良かった」は、私が今井氏の心中を重々忖度するに、
「東北の被害は甚大だった。あの規模の地震が首都圏で発生したとすれば、被害はさらに想像を絶するものになっていた。今後、首都圏の防災体制をさらに強化しなければなりません」
ということを言いたかったんだろう(忖度しすぎか(笑))。
しかし、決定的に言葉が足らない。「取り消させていただく。ご心配を加えたことを改めておわび申し上げる」という直後の撤回・謝罪の言葉も(これが報道どおりだとすれば)、おかしな日本語だ。
「〜させていただく」という表現に、かねがね私はきわめて不遜なニュアンスを感じている。それはさておいても、「ご心配を加えた」という日本語はあまり聞かない。ここは「ご心配をおかけした」というべきだ。そもそも心配をかけたのは誰に対してか。東北の被災者か。パーティ会場に集まった自民党派閥の議員たちにか。前者だとすれば東日本大震災被災者家族の一員として私は、「心配なんてしてないよ。ただ呆れているだけだ」とだけ返したい。
大臣の職を辞し、ついでに議員の職も辞し、今井氏には日本語の勉強を基礎からやり直していただきたい。
はい、やり直し!
2017/04/30 追記
この件に関連して、小田嶋隆氏が絶妙のコラムを書いている。
私もちょっと思ったように、「東北でよかった」という発言は、そこだけを切り離さず、文脈の中に位置づければ、さほど目くじら立てるほどの発言ではない。ただ、その前の「自己責任」発言があるから、サッカーでいえばイエローカード2枚、柔道でいえば合わせ技で一本、で更迭せざるをえなくなったのだと私は理解した。しかしよくよく考えれば、更迭の直接の理由は小田嶋氏の指摘するとおりである。
つまり、
今村氏は、被災地の人々の感情を踏みにじったことよりも、むしろ、首相の顔をツブした罪によって更迭されたのである。
そこから話を広げて、小田嶋氏は次のように指摘する。
突飛な思いつきだと言われるだろうが、私は、先日来話題になっている官僚の「忖度」と、今回の辞任劇の陰の主題に見える「揚げ足取り」は、実は、同じひとつの現象の別の局面に過ぎないのではなかろうかと思いはじめている。
深い考察だとあらためて感心した。