自民党若手勉強会での講演での、百田尚樹の発言がまた暴露された。
「南太平洋の小さな島。ナウルとかバヌアツとか。ツバルなんか、もう沈みそう。家で例えればくそ貧乏長屋。とるものも何もない」「アイスランドは年中、氷。資源もない。そんな国、誰がとるか」
話は断片的に切り取られているから、どういうコンテキストでの発言か正確にはわからないが、おそらく世界の国には偉大で金持ちの国と、そうでない国があって、貧乏国は戸締まり=防衛なんかしなくてもいいが、日本は金持ち国だから、防衛が大切だよという文脈だったのではないかと推察できる。
環境サミットで世界がその将来を懸念し、支援の手を伸べている太平洋諸国に対する侮蔑発言という以前に、ものごとの考え方における何か基本的なものの欠如を感じてしまう。
もしかしてこの人の国家観は、「獲るか獲られるか」の弱肉強食、戦国時代のままで止まってしまっているのではないか。それぞれの民族集団には固有の集団形成のあり方、「くに」の形があるのであって、それが世界の多様性を生んでいるのだ。そこに単純な優劣の価値判断を持ち込むのは、子供じみている。よその国を小馬鹿にしなければ、自分の国のよさを認められないというのでは、ナショナリストとしてもかなり低劣なレベルといわざるを得ない。
ちなみに、そういう「取り柄のない」南太平洋の島々でも、太平洋戦争時は日本帝国にとっては戦略的価値をもち、日本軍は必死でそれを獲得・防衛しようとした。国が戦争を仕掛けるのは、そこに資源があるからだけでなく、戦略的要衝を構築するという狙いもあるのだ。それを知ってか知らずか、こういうずさんな軍事観のままでは、おそらく中国の現在の海洋戦略の狙いも見えてこないだろう。そんな人の講演をいくら聞いても、自民党の若手はますますオバカになるだけではないかと、他人ごとながら心配になる。
アイスランド=無資源国という理解もそうとう古い知識のようである。百田がたぶん「つぶさない」新聞の一つであろう産経新聞は、3月にこのように報じた。
日本も見習うべきか 「資源小国」から「地熱大国」へ変貌したアイスランド いまや電力輸出も視野
世界最北の島国アイスランドは、地熱発電所の積極的な開発を続け、エネルギーを化石燃料の輸入に頼る「資源小国」からの脱却を果たした。いまや自国の電力需要は地熱などの再生可能エネルギーだけで賄うことができ、近年は電力の輸出にも関心を寄せる。
少しは僚友の新聞ぐらい読んでおけよ。
先に報じられた、普天間基地の成り立ちについての誤解とか、地主たちの年収についての無知とか、これだけウソ八百を並べられると、百田が自民党若手議員の勉強会で語ったことは、その全体がたんなる飲み屋の馬鹿話、タチの悪いジョークだらけだったのではないかと思えてくる。こんなウソ「八百」田の漫談に、自民党はいったいいくらの講演料を払ったのだろうか。