ハノイ中心部のインターネットや携帯電話インフラはおしなべてよい。固定電話網が滞っている間に、全土にあまねく無線インフラが浸透し、固定電話よりも携帯電話が幅を利かすという事情は、おそらく中国や他の東南アジア諸国にも共通するのではないか。若者は当然のこととして、街行く人々のほとんどがスマホを所持している。バイクを運転しながらスマホというのもありふれた風景だ。
旧市街で道を聞いた学生風の若者は、「僕もこのあたりよく知らないんだけれど」と言いながら、iPhoneのGoogleマップを使って行くべき道順を指示してくれた。
ただ海外からの旅行者にとっては、SIMM入れ替えでもしない限り、現地の3G、4G網を気軽に使うわけにはいかない。ホーチミンではiPhone(ソフトバンク)のローミングを「海外パケットし放題」で使ったが、ガシガシ使うとパケット料金はすぐにMAXに達し、日額2,980円程度を払わなければならなくなる。
その通信料金を少しでも安くしようと、今回のハノイでは、海外用モバイルルーターの貸し出しサービス「グローバルWi-Fi」を利用することにした。「ベトナム3G大容量ライトプラン」というやつで日額1,400円程度に収まるはずである。
つまり現地での通信はすべてWi-Fiを使ってやろうという算段である。そのつもりで、iPhone、iPadを持ち込んだわけである。着いてみると都心部のホテルはもちろんのこと、主だった喫茶店やレストラン、フォー屋さんなどにはみな無料のWi-Fiが整備されている。テーブルの上にパスコードが示されていたり、店員に頼めばiPhoneを採り上げてパスコードを入れてくれたりする。店内Wi-Fiの普及度合いは東京以上であるようにも感じた。そういう場所に立ち寄れば、メール、Web閲覧にあたって利用料金の発生を心配する必要はないのだ。
ただ、街歩きをする場合はどうか。知らない街を歩くには地図は必須。道に迷ってガイドブックを取り出すのもいかにも旅行者風で悪いことはないのだが、できたらここで、Googleマップをサクッと使いたい。名所旧跡に立ち寄ったとき、その説明をWikipediaで調べたい。
そんなときWi-Fi網が使えれば最高だ。ハノイぐらいだったら、街中で拾えるいわゆる“野良無線”もたくさんあって……という情報も目にしたが、それには頼らないことにして、前述のモバイルルーターを借りたわけである。ホテルから出たらルーターをオン。目的地を設定して、後はGoogleさんが案内するままに街歩き……。
しかしながらアクシデントがあって、目論見は外れた。ホテルに着いて早速、モバイルルーターの設定を始めようとしたのだが、なぜかルーターが全く起動しないのだ。電波を拾うどころの話ではなく、本体が起動しませ~ん。
これはまずいと、ホテルのWi-Fiを使って「グローバルWi-Fi」(運営会社ビジョン)のカスタマーサポートとやりとり。最近はメールじゃなくて、LINEでサポートをするんだとか。何度かのやりとりのすえ、ルーターが壊れていることを確認してもらって、代替案の提案を受けた。結論からいうと、ルーター貸与の契約はそのまま。その替わり、現地の通信にはソフトバンクの「海外パケットし放題」を使うことにし、その分の料金は後日、明細書を送付すればビジョンが支払ってくれるという条件に落ち着いた。
結果的にはそう悪い話ではなかった。上限2,980円ではなく1,400円(日額)で、3Gローミング使い放題でiPhone/iPadが使えることになったのだから。
むろん貸しだし機器の事前点検をしていない「グローバルWi-Fi」には一定の不信感をもったが、それでも後のサポートや代替措置は丁寧だった。
ちなみに、現地でのスマホ普及状況をみると、iPhoneがAndroid端末を上回っているように感じた。ベトナムにはAppleの正規ディストリビューターはあるものの、この記事にもあるように、“偽アップルストア”が乱立状態。もちろん、iPhoneのニセモノを売っているわけではなく、ディストリビューターから供給を受けて、紛らわしいネーミングの「偽アップルストア」の看板を掲げているだけなのだけれど。ただ、こうした状態はまもなく変わるだろう。今年11月にAppleがホーチミンに子会社を設立したことで、現状のブランドを毀損するような販売状況は一変するはずだ。