小石川日乗Hatena版

おっさんがよしなしごとを書き散らします

映画『否定と肯定』

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 新年最初の映画劇場鑑賞。日本にもウジャウジャ出現している、歴史修正主義の不誠実なデマゴーグたち(例えば百田尚樹など)に見せつけてやりたい秀作。

 アウシュビッツ否定論は、欧米だけの話ではなく、実は日本でもかつて華々しく登場したことを忘れるわけにはいかない。若い人は知らないかもしれないが、90年代半ばのいわゆる「マルコポーロ事件」の火付け役になった西岡昌紀氏がその典型だ。

 西岡氏はもともとは医学者だが、おそらく欧米の歴史修正主義に感化されたのだろう。アウシュヴィッツを“取材”し、「アウシュヴィッツにガス室はなかった」「ユダヤ人絶滅計画はなかった」などと、映画のデビッド・アービングと同様な主張を展開し、論文を文藝春秋の雑誌「マルコポーロ」に掲載した。

 しかし、これはサイモン・ウィーゼンタール・センターなどから激しい抗議を受け、雑誌は自主廃刊となり、その編集長である花田紀凱氏は実質的に社を追われた。(Wikipedia 「マルコポーロ事件」

 当時の日本でも、あまりにも唐突な感のある西岡氏の主張が広く受けいれられることはなかった。しかし、その論文を堂々と掲載した背景には、この雑誌の編集者になんらかの政治的な意図があったことはたしかだ。それは、その後の花田紀凱氏が編集する雑誌の性格をみればよくわかる。

 もちろん当時も、ユダヤ人団体からの抗議で雑誌が廃刊に追い込まれたことに、言論の自由という観点から疑義をはさむ声もあったことは事実だ。しかし、歴史の検証にさらされないまま横行する「言論の自由」が、いかに陳腐で、時として一方的なヘイトスピーチにつながるものであるかは、今となってみれば明らかだろう。映画はそのことをしっかりと示している。

*2018/01/06 日比谷TOHOシネマズ シャンテにて観賞

●参考サイト: デボラ・リップシュタット本人のTEDにおけるスピーチ「ホロコースト否定説の噓に潜むもくろみ」

●参考記事: (私の視点)修正主義の危険性 歴史教育で「悪意」封じよ 武井彩佳

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