小石川日乗Hatena版

おっさんがよしなしごとを書き散らします

ジョン・ダワー氏健在!

 久しぶりのジョン・ダワー氏へのインタビューだ。著作の画像も添えておこう。

⇒ 日本が誇るソフトパワーとは ジョン・ダワー氏に聞く:朝日新聞デジタル:
敗北を抱きしめて 上 増補版―第二次大戦後の日本人 転換期の日本へ 「パックス・アメリカーナ」か「パックス・アジア」か (NHK出版新書) 忘却のしかた、記憶のしかた――日本・アメリカ・戦争容赦なき戦争―太平洋戦争における人種差別 (平凡社ライブラリー)

 ――現政権が進める安保法制で、何が変わるでしょうか。
 「日本のソフトパワーが試練にさらされています。集団的自衛権の行使に踏み込み、日本を『普通の国』にするというのが保守政治家らの考えですが、普通とは何を指すのか、私には分かりません。国際的な平和維持に貢献するといいつつ、念頭にあるのは米軍とのさらなる協力でしょう。米国は軍事政策が圧倒的な影響力を持っている特殊な国であり、核兵器も持っている。そんな国の軍隊と密接につながるのが、果たして普通なのでしょうか」
 ――戦後の日本外交は、米国との関係を軸にしてきました。
 「日本の外交防衛政策を知りたければ、東京でなくワシントンを見ろとよく言われます。環太平洋経済連携協定(TPP)への参加しかり、アジアインフラ投資銀行(AIIB)加盟についての判断しかり。核戦略を含め、米国の政策を何でも支持するのが日本政府です。その意味で、戦後日本の姿は、いわば『従属的独立』だと考えます。独立はしているものの、決して米国と対等ではない」
 「過去を振り返れば、安倍晋三首相がよく引き合いに出す、祖父の岸信介首相が思い浮かびます。岸首相は確かに有能な政治家ではありましたが、従属的な日米関係を固定化する土台を作った人だと私は考えています」
 「同様に、孫の安倍首相が進める安全保障政策や憲法改正によって、日本が対米自立を高めることはないと私は思います。逆に、ますます日本は米国に従属するようになる。その意味で、安倍首相をナショナリストと呼ぶことには矛盾を感じます」
 ――現在のアジア情勢を見れば、米軍とのさらなる協力が不可欠だという意見もあります。
 「尖閣諸島南シナ海をめぐる中国の振る舞いに緊張が高まっている今、アジアにおける安全保障政策は確かに難題です。民主党の鳩山政権は『東アジア共同体』構想を唱えましたが、それに見合う力量はなく、米国によって完全につぶされました」
 「だからといって、米軍と一体化するのが最善とは思えません。冷戦後の米国は、世界のどんな地域でも米軍が優位に立ち続けるべきだと考えています。中国近海を含んだすべての沿岸海域を米国が管理するという考えです。これを米国は防衛と呼び、中国は挑発と見なす。この米中のパワーゲームに日本が取り込まれています。ここから抜け出すのは難しいですが、日本のソフトパワーによって解決策を見いだすべきです」

ニューヨーク支局長・真鍋弘樹2015年8月4日10時19分

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