小石川日乗Hatena版

おっさんがよしなしごとを書き散らします

平壌の「虹ナムル」

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 19種類のメニュー。上から「食パンとバター」「クリームパン」「三色餅」「キムチ」「山草フライドチキン」「魚の冷製煮込み」「海鮮サラダ」「虹ナムル」「肉団子入りキノコ汁」「緑豆チヂミ」「アヒル煮込み揚げ」「魚の揚げ物フルーツソース」「牛肉胡椒(コショウ)ソース焼き」「キノコ野菜炒め」「そば」「果物」「生菓子」「そば茶」「アイスクリーム」とある

緊迫、軍事パレードの夜に…大宴会 北朝鮮労働党幹部ら

 メニューのなかで気になるのは「アヒル煮込み揚げ」。それっぽいものさえ、私は食ったことがない。それから「虹ナムル」ってなんだろう。きっと七色の野菜や山菜が美しく彩られる、賓客のためのもてなし料理なのだろう。そんなもの食ったことねぇと、平壌在住以外の北朝鮮国民の98%は思っているのではないか。

 北の政府が宴会にうつつを抜かしている頃、日乃本の国の首相もまた桜の下で花見とシャレ込んでいたわけで……。今回の「北朝鮮危機」とはそもそも何だったのか。いや、危機は去っていない、来週かも再来週かもとか、一部メディアは危機を煽り立てるのだが。

 もし今回の四月事態が平穏無事に終わったとしても、一部メディアは「今そこにある危機」を、「近い将来の危機」と言い替えて、人々の不安を継続的に煽り続けることだろう。強迫神経症的な空気がメディアによって醸成されつつある。それは一種のメディア神経症というにふさわしい。

 これはやっかいな病気だ。ユダヤ人への恐怖と憎悪を何百年と煽り続けてきたヨーロッパは、ついにナチスを生んだ。現代においては、イスラム圏からの移民問題が欧州における反民主主義的な極右の成長を支えている。自由と寛容という外皮の下には、つねに民族排外主義のマグマが潜んでいる。その基本的な構造は変わっていない。

 日本でいえば「北朝鮮拉致問題」が似たようなものだ。それは不確かな恐怖なのだ。「拉致被害者のすべてがもう死んでいる」と誰もが心中に思いながらもそれを言葉にすることができない。詳細は不確かであるがゆえに、人々は苛立ち、そのなんとも隔靴搔痒の時間の蓄積のなかで、異論は封殺され、やがてすべてを解決してくれる事態──それを実現してくれる強大な権力を欲するようになる。

 今度、朝鮮・韓国料理屋に行ったら「虹ナムル」を頼んでみよう。平壌の、そして極東アジアの「リアル」を少しは感じることができるかもしれない。

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