小石川日乗Hatena版

おっさんがよしなしごとを書き散らします

偽ニュースと確証バイアス=藻谷浩介(毎日新聞2017年4月16日)

 

それはともかく政権を擁護したい側は、ここぞとばかり中国や北朝鮮の脅威をあおっている。中でも最近ネットで見て仰天したのは著名右派論客の「中国が日本を本気で取りに来ているのは、誰の目にも明らかでしょう」という発言だ。「日本」は尖閣諸島限定ではなく沖縄や日本本土を含んでいるようだったし、「取りに来ている」も不動産買い占めなどの話ではなく「軍事的な侵略」の意味らしい。

だが現代は、フビライ・ハンが歴史上唯一の大陸からの日本侵略を試みた鎌倉時代でもなければ、欧州の帝国主義国が続々とアジアやアフリカを侵略した19世紀でもない。国内総生産(GDP)世界3位のハイテク工業生産基地かつ金融拠点である日本が侵略などされれば、世界経済は空前の大混乱に陥る。中国も世界を相手に製品を輸出することでGDP世界2位となった工業国であり、富裕層や政府高官は米国など国外に多額の資産を持っている。無人島を巡る係争は仕掛けてきても、ロシアのように有人の他国領土に侵攻し経済制裁を受けるような自殺行為はしない。これが分からない人は、頭の中身が19世紀のままで、大国が深く相互依存する21世紀の世界経済システムが理解できていないのではないか。そんな中で本当に怖いのは、北朝鮮のようなもはや失うものがない国であり、これに対処するには米国だけでなく中国や韓国やロシアとも、陰に陽に是々非々で連携するしかない。いかに向こうの政情が混乱しているとはいえ、韓国大使を召還している場合ではなかったのではないか。

時代の風:偽ニュースと確証バイアス=藻谷浩介・日本総合研究所主席研究員 - 毎日新聞

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