しかしこれはひどいな。
維持管理費として50年間で1416億円が必要になる一方で、年間収支の黒字見込みは3800万円しかなく、しかも、収益の根拠が明らかではない。そんなJSC側の報告に疑問を呈する委員は一人もいなかったという。みなさんお忙しい方々ばかり。きっと根回しが徹底されていたのだろう。JSCの有識者会議に建築家の委員は安藤忠雄一人しかおらず、しかもこの日は欠席。誰も責任をとらない「国立」施設がこうしてまた一つ増える。
JSCにも有識者会議にも、巨額の税金を投じるこの事業と真剣に向き合っているとは思えない。その在りようは、この国で繰り返されてきた「一度進み出したら止まらない」公共事業そのものだ。
この問題については、各メディア喧しいところだが、7/9付の「LITERA」には、
# 総工費2520億円、新国立競技場の恐ろしい実態! 実は森喜朗がデザインを決定していた?
という記事が掲載されている。新国立競技場計画について、かなり早い段階から警告を発してきた建築エコノミスト森山高至氏のトークショーでの発言を取材したものだが、記事中では「大手紙政治部記者」のこんな匿名コメントも紹介されている。
「派手好きで目立ちたがり屋で知られる森さんですが、長年関わってきたラグビーのW杯を日本に招致すると同時に、その会場として巨大で斬新な新国立競技場建築を目論んでいた。しかし、ラグビーだけでは巨額の建築費を捻出できない。そのため、当初は渋っていた石原慎太郎(当時の東京都知事)さんを口説き、W杯と東京五輪をセットにした新国立競技場建設を目指したのです。そんな森さんからすると、東京五輪の目玉である新国立競技場の計画を大幅に見直ししたら、世界から笑い者になるということでしょう」
さもありなん。
私は2020年東京五輪開催について総論では反対していないが、競技場建設のための無駄な税金支出には明確に反対だし、オリンピックと国家スポーツをめぐる政治力学には、それに批判的な立場からいたく興味がある。
この記事で森山氏が言うように、私もどちらかと言えば、
現在起きている事のおかしさを、みんながわかって面白がる。(しかめっ面で反対運動に徹するよりも)そのことの方が大事
という態度なんである。