昨日のツィートまとめにもあるが、「世界遺産」に関する今のところの私の考え方は、歴史には光と影があり、その双方を記録してこそはじめて人類的遺産になるのではないか、というぐらいのものである。それ以上の深い関心はない。人類の進歩に資するというより、現状では世界のツーリズム産業の発展に資するぐらいのものでしかない、とも考えている。
とはいうものの、「明治日本の産業革命遺産」登録をめぐる日韓政府のやりとりは気になってはいる。そして、この問題を報道するメディア(ソーシャルメディアを含む)の、「「韓国のいいがかり」とか「外交戦での日本の敗北」とかいう論調には、一抹のいかがわしさも感じている。
そんなおり、「LITERA」に野尻民夫氏のこんな記事が載った。
#世界遺産「韓国の裏切り」報道は大嘘! 難癖をつけたのは日本政府と安倍首相だった
世界遺産登録に合意していたはずの韓国が土壇場で反対を表明したのは「裏切り」であるとする報道があるが、それは間違いであるという趣旨の記事である。
ことの真偽は私にもよくわからない。どっちでもいいという気もする。だが、この記事からはいくつかのことを教えてもらった。例えば──
(朝鮮人徴用について)
日本政府はこれを日本国民に対して行ったのと同じ「徴用」だと言っているが、まったくちがう。日本人には国民徴用令で家族への扶助制度があったが、この徴用制度は1944年まで韓国人には適用されていない。そういう意味では、韓国が「強制労働」の事実があったとするのは当然の主張なのだ。
(時代を限った登録だから韓国の主張に根拠はないという主張について)
また、日本は対象を1850年代から1910年までに限定。朝鮮人徴用とは「時代が違う」と主張しているが、これについても、ポルトガルのユネスコ大使から「遺産群は総体で一つであって、ある時代を切り取ることはできない。全参加国が満足できる結果を待っている」と批判されている。
私はこの記事の結論部分に大いに賛意を表するものである。というか、これが私が先のツィートで言いたかったことなのだ。
(そもそも世界遺産とは)
各国がそれぞれの国のすばらしいところをアピールするためのものではない。正の面、負の面あわせて世界の歴史に意味のあるものを保存しようという、人類共通の遺産だ。だから、アウシュビッツ強制収容所や、広島の原爆ドームも、また世界文化遺産に登録されている。
産業革命も、産業や経済が発展したという功績がある一方、搾取の構造や悲惨な労働を生んだという負の側面があることは、日本に限らず世界共通の認識だろう。そうした負の側面を認めることは、屈辱でも恥でもない。