小石川日乗Hatena版

おっさんがよしなしごとを書き散らします

ひとりぼっちで冷める

 朝日新聞(2015/07/06)が、先の自民党「文芸懇事件」について、より突っ込んだ記事を掲載している。会の設立趣意書にある「政策芸術」という言葉についてのこだわりだ。

政治と芸術、結びつく先は 「文化芸術懇話会」から考察(守真弓記者)

「この政策芸術という言葉を聞いた瞬間に、アウトだと思った」と言うのは、文化批評にも定評のある千葉雅也・立命館大学准教授(哲学・表象文化論)。国が特定の価値観に基づく芸術文化を推進してはいけないことは「文化史の常識」だが、「政権側の人たちは、そうした常識に抵抗したいのではないか。ナチス・ドイツがモダンなものを『退廃芸術』と呼んで排除し、保守的でわかりやすいものを推進したことを想起させる」と話す。

  実は私も文芸懇の活動趣旨を初めて聞いたとき、瞬間的にナチス退廃芸術展のことを思い出し、背筋が少し寒くなったのだ。


 記者は、文化人や芸術家の国家や政治とのかかわり方について、平田オリザ会田誠に話を聞いているが、私は会田の次の言葉が強く印象に残った。

「国家プロジェクトの誘惑は常にある。そうしたものへの憧れを抑える、誘惑との戦いが、僕の作品のモチベーションにもなっている」(中略) 芸術の受け手の側も「感動と一体感」には警戒が必要だと会田氏は言う。反対語は「ひとりぼっちで冷める」だ。「みんなの比重が感動の方にちょっと行きすぎたら、一人で冷ややかになる。そうやってバランスをとって揺れ続けるのが、流されない最善の手じゃないですか」


「ひとりぼっちで冷める」──私もこれで行こう。

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