小石川日乗Hatena版

おっさんがよしなしごとを書き散らします

帝国の建築家たち──ドーム対決

f:id:taa-chan:20170504210803j:plain [神奈川県立歴史博物館]

 連休だというのに仕事。しかも急に入った横浜みなとみらい案件。さいわい今日は午前中で終了したので、馬車道あたりをランチがてら小散歩。このあたりは近代建築の宝庫だ。

 神奈川県立歴史博物館(改装のため展示は休止中)はもともとは1904年(明治37)に建った旧・横浜正金銀行本店。ネオバロック様式、とりわけ青銅葺きのドームが美しい。設計は妻木頼黄(つまき・よりなか1859-1916)。ジョサイア・コンドルの弟子で、工部大学校(現・東大建築科)では辰野金吾(1854-1919)の後輩にあたる。横浜赤レンガ倉庫の設計者でもある。共に日本の近代帝国を支えたエリート建築家だった。

 辰野と妻木はかなり強烈なライバル関係にあったといわれる。国会議事堂の設計担当だった妻木に辰野がイチャモンをつけたというのは有名な話。

日露戦争後、桂内閣のもとで再び議院建築の機運が盛り上がるが、辰野金吾らは公開コンペ開催を要求し、議院の設計を進めていた妻木らを批判した。桂内閣が大正政変のため倒れた後、議院建築の計画も延期となり、妻木は官職を辞任。病気がちになり、1916年死去。

妻木頼黄 - Wikipedia

 ただ当の辰野も、コンペの審査中に亡くなってしまうのだが……

 この因縁のライバル関係を念頭におくと、それぞれの作品──辰野金吾の東京駅赤レンガ駅舎(1914年)と、妻木頼黄の神奈川県立歴史博物館(1904年)の対比はあらためて興味深い。特にドーム屋根の構造に関しては、私は東京駅のほうが意匠性に富んでいるとは思うが、妻木の正統派的な佇まいも捨てがたい。

f:id:taa-chan:20170504210837j:plain [東京駅赤レンガ駅舎]

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