小石川日乗Hatena版

おっさんがよしなしごとを書き散らします

自民党のバカさ加減についての考察

 世の中にはいろんなバカがいるし、自民党にも一定程度バカがいるのは周知のことだ。しかし、バカさ加減もここに至るや、“笑死”ものである。

[学校教育における政治的中立性についの実態調査 | 参加しよう | 自由民主党]

 なんでいまどきこういう時代錯誤の密告フォームができたかというと、

「高校等で行われる模擬投票等で意図的に政治色の強い偏向教育を行うことで、特定のイデオロギーに染まった結論が導き出されることをわが党は危惧しております」(同上)

 という危機意識が彼らには強いかららしい。
 その危機感の根拠が私にはよくわからないのだ。ちなみに先の参院選投票では、若年層ほど与党に投票しているのだから(18-19歳の投票行動 2016/07/11) 、何を彼らは恐れているのかとは思う。

 むしろ恐れるのは私のほうだ。先の参院選における若年層の投票結果は、もしかして、自民党を支持する教員らによって、「意図的に政治色の強い偏向教育」が行われ、「特定のイデオロギーに染まった結論が導き出され」た結果ではないのか。


 教師:安保法制は中韓の侵略に対して、日本の国と国民を守るものためのものだ。
 生徒:でも、先生、安保法制は憲法違反だって、憲法学者の圧倒的多数が言ってますよね。
 教師:いや、3人ぐらいの学者は憲法に合致していると言っているよ。
 生徒:でも、その憲法を変えようとしているんでしょ、自民党は。
 教師:それは押しつけ憲法だからだよ。
 生徒:誰が押しつけたの?
 教師:アメリカだよ。
 生徒:でも、安倍さんってアメリカと仲よさそうじゃないですか。アメリカの議会で演説したとき、「てめぇら憲法押しつけやがって。今度俺の代で変えちゃるからな」って、なんで啖呵を切らなかったんでしょうかね。


 そんな教師と生徒の会話があったか、なかったか。


 もう一つ馬鹿馬鹿しいのは、都知事選投票にあたって自民党東京都連が出したお触れ。

[各級議員(親族含む)が非推薦の候補を応援した場合は除名等処分の対象となる]


「親族」とは民法第725条によれば、「6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族」のことだから、この触書は自民党議員であるA氏の、爺さんの兄弟姉妹の孫の投票行動も縛ることになる。はたして自民党ゲシュタポはそこまで調べるのか、いや調べる力をもっているのか。実際は単なる恫喝文書にすぎないとしても、そこに表現される思想は、憲法改正を急ぐ昨今の自民党の本質を示している。


 自民党憲法改正草案24条(新設)によれば、

家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない。
 とされている。
 助け合う家族を美しいと感じるのは人の自由だが、それが憲法に義務として規定された瞬間に、家族は国家の最小単位に組み込まれ、国家意思を底辺にまで貫徹する支配装置として機能する。

 国家の形成において、個人の役割ではなく家族の役割をことさら強調するのは、哀れなことに思考が明治時代で停止してしまった自民党員の根強い「家族国家論」から来ている。ちなみに家族国家論とは、人類普遍の自然な道徳観などではなく、明治期に天皇制を支えるために案出された明治天皇制固有のイデオロギー(虚偽意識)である。
 それを自民党憲法草案は復活させようとしている。


 彼らのいう「助け合わなければならない」という強制は、いずれは、家族ばかりか親族にまで及ぶだろう。一族の家長が「マスダ」だといえば、郎党もまた「マスダ」と言わなければならない。それが、助け合いの精神なのだ。
 あっ、間違った。誰かが「ジョンウン」だといえば、一族郎党、津々浦々の人民一人ひとりが「ジョンウン」と言わなければならないのだ。


 そこには、近代的な意味での政治主体としての個人は存在しない。なぜなら、自ら意志決定して候補者を選ぶなどという個人の自由は、自民党憲法草案が(あるいは独裁国家が)ことのほか嫌うものだからだ。

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